被成年後見人・被補助人・被保佐人と相続放棄の熟慮期間

家族が亡くなると、相続が開始されますが、プラスの財産が多い場合は、相続人が多いと、遺産相続のトラブルに巻き込まれる場合があります。
親族と遺産相続の争いをして、家庭裁判所での調停や審判で10年以上も争っている、などという方も、大勢おられます。
また、被相続人に多額の負債があり、相続をすると相続人の生活が成り立たなくなるという場合もあります。このようなとき、負債を相続したくない場合は、相続放棄をすることができます。
相続が開始してから、3ヶ月以内に相続放棄申述書を被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出する必要があります。この3ヶ月の期間のことを、「熟慮期間」と言います。
熟慮期間は、相続財産の内容を調査するための期間として認められているものです。また、熟慮期間を3ヶ月とすることにより、早期に法律関係を安定させるというねらいもあります。
先順位の相続人が相続放棄をしたために、繰り上がって相続人となった次順位の相続人の熟慮期間の起算点は、先順位の相続人が相続放棄をしたことを知ったときです。被相続人の死亡を知ったときではありません。
また、相続人が未成年者である場合や、認知症等で判断能力が低下している場合には、民法917条が適用となり、「相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは、第九百十五条第一項の期間は、その法定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があったことを知った時から起算する。」ということになります。つまり、成年後見人が選任されない限りは熟慮期間は進行しません。ただし、成年後見人選任の申立をしたとしても、家庭裁判所の判断で、「後見相当」ではなく、「補助」「保佐」相当とされた場合には、補助人や保佐人は法定代理人ではないので、民法917条が適用にはならず、被補助人や被保佐人が自己のために相続が開始したことを知ったときから熟慮期間が進行するので、その点には注意が必要です。
家庭裁判所で申述が受理されたら(放棄が認められたら)、相続放棄申述受理通知書が発行されるので、プラスの財産やマイナスの負債などの相続人ではなくなります。相続放棄をした相続人の子も、代襲相続人となることはできません。
相続が開始してから、何らかの事情で相続を承認するのか放棄するのかすぐに決めることが出来ない場合は、熟慮期間の延長が認められる場合があるので、家庭裁判所に相談をするようにして下さい。延長を認めるかどうかは、相続財産の構成の複雑さや所在地、相続人の在住地などの状況を考慮したうえで、家庭裁判所が判断します。

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